
娘が思春期を迎えたころ、友人のななちゃんと、娘や私の身体的心理的な話をしていたときのこと。
特に深い話をしていたわけではなく、ただ、日常の延長のような会話の中からななちゃんが
「自分の体を知るツールで、すごく素敵なダイアリーがあるよ。」と言った。
それが Mandala Lunar。
ななちゃんは、Mandala Lunarを日本語の出版を実現させたかおりさんという方と友達で、Mandala Lunarの素晴らしさを教えてくれた。
その数ヶ月後、ななちゃんから聞いていたかおりさんからの連絡とともにMandala Lunarが突然、私のもとにやってきたのです。
Mandala Lunarをはじめて手にした日のこと

かおりさんからの郵送はすぐに届きました。
封を開けたとき、特別な感動はなく、「可愛い装飾だな」「思ったより厚みがあるんだな」そんな軽い印象でした。
表紙は深い藍色で、真鍮のような金の型押し。
植物や動物のモチーフが繊細に描かれ、紙は少しざらりとしていて、手に落ち着く質感でした。
ただ、そのときはまだ、それ以上でもそれ以下でもなかったんだけど、ページを開き、少しずつ読んでいくうちに、いつの間にか印象が変わっていきました。
描かれた絵と短い詩のような言葉が、ページをめくるごとに呼応するように調和していく。
ただ、読んでいるうちに「とても素敵なもの」と感じ始めていました。
理屈を超えて届く言葉

私はこれまで、瞑想や心身の働きを神経科学や心理学の理論を通して学んできました。
心のあり方、心が受ける体への影響、心が外界から受け取ること
――それらの関係性には明確な科学的根拠があります。
Mandala Lunar に書かれた文章を読んだとき、私はその「理論で理解していたこと」が、まったく違う道を通って表現されていることに気づいたんですよね。
このノートを作った人たちは、私が科学的に整理してきたことを、感性という入り口から理解している。
彼女たちの文章には、自然界の法則が多く描かれている。
潮の満ち引き、季節の移ろい、月の満ち欠け――
それらが人の心や体のリズムと呼応していることを、詩や絵を通して伝えているよう。
さらに、その自然法則の中で、私たちの「心のあり方」までを丁寧に描いている。
それは、理論を知らずとも、体験や感受を通して到達した知のように思えました。
ページを読み進めながら、「これは科学の言葉で言えばこういう現象だ」と思う瞬間がいくつもありました。
理屈ではなく、感性から理解された真理。それが、私の中の理論的理解と静かに共鳴していました。
だから、読んでいるうちに「とても素敵なもの」と感じ始めていったんです。
こういうふうに、自然界と自分をつなげていけるってなんて素敵なことなんだろうって。。。
Mandala Lunarというノート

Mandala Lunar は2015年、ブラジルの3人の女性(Ieve Holthausen、Naíla Andrade、Victoria Campello)によって作られました。
月のリズムや季節の移ろい、身体の変化や心の揺らぎを重ね合わせるように記すダイアリーです。
のちにスペインのプロジェクト“Mawu”によって北半球版が出版され、今では多くの国で手に取られています。
日本では、冒頭で紹介したかおりさん(横山夏織さん)が、このノートの世界観を日本語に訳し、届けてくれています。
彼女は 「ツキヨミノ(Tsukiyomino)」 という名でプロジェクトを主宰し、「自分を深く知るためのツールとして、このノートを多くの人に届けたい」という思いのもとに活動されてるみたいです。
ブラジルやアマゾンでの体験、自然や先住民の知恵との関わり、そして母としての日々の中で育まれた感性が、この翻訳や表現の根にあるのだそうです。
「自分を大切にすることが、世界とやさしくつながる循環になりますように」
――ツキヨミノのサイトに書かれたその言葉が、Mandala Lunar の本質をそのまま映しているように感じています。
“女性”としてより、“人”としての体

正直に言うと、私は生理や女性性に対してあまり特別な意識を持って生きてきたわけではありません。
“女性”という視点よりも、“人としての自分”を見つめることの方に関心がありました。
だからこそ、女性という体をどこかで見落としていたのかもしれません。
Mandala Lunarを前にして感じたのは、「女性の体を感じること」と「人として在ること」も思ってる以上に大切にしてもいいのではない?ということ。
呼吸や鼓動、体温、血の流れ――
女性ならではの体や心。
Mandala Lunarは、そのことを優しく静かに気づかせてくれる感じがします。
体という小さな宇宙
Mandala Lunar は、予定を立てるための手帳ではなく、何かを変えるためのツールでもない。
ただ、自分という小さな宇宙を見つめるためのノート。
外の自然と内側の感覚が色々な方向に流れていくのを、判断を交えずにありのままに感じ。。
日々の自分のリズムを通して、自分という存在が「自然の一部」であることを思い出とともに、全てが「自分の一部」でもあることを思い出し受容していくものみたい。
おわりに

実はMandala Lunarは、最近手元に届いて物語を読んでばかりで、まだに書き込みはしていません。
だけど、ノートに書かれた月齢シートという中に色々描き込むことが楽しそうだと思っていて、それがきっと私特有のマンダラを作っていくのだろうと思うんだ。
実際に使いはじめたら、どんな色が生まれるのだろう。って想像すると、ワクワクしています。