アーナパーナサティとは
アーナパーナサティは、仏教の瞑想方法の一つです。
「アーナパーナ」=呼吸 /「サティ」=きづき |
まとめると「呼吸をとおした気づきが」日本語訳としては近く、「呼吸瞑想」や「呼吸に気づく瞑想」など言われています。
禅の瞑想における位置づけ
禅の瞑想において、アーナパーナ・サティ、ヴィパッサナー、メッタがあります。
アーナパーナ・サティは、集中瞑想で比較的簡単な瞑想法のため、瞑想の入門として扱われます。(簡単といってもちゃんとしたやり方があるよ!)
また、ヴィパッサナーは、洞察瞑想。メッタは慈悲の瞑想と言われています。
アーナパーナ・サティ | ヴィパッサナー | メッタ |
集中瞑想 | 洞察瞑想 | 慈悲の瞑想 |
仏教の瞑想について、マインドフルネスとの違いについてとあわせてこちらにまとめています。
16の呼吸とその呼吸への気づき
伝統的なアーナパーナサティの書である「アーナパーナサティ・スートラ」では、呼吸を4つの部門にわけ、さらに4つの項目にわけ、合計16の項目にしています。
4つの部門 | 4つの項目 |
---|---|
1番目の4つの呼吸 (身体の部門) | 1長く息を吸いながら、長く息を吸っていることを知る。長く息を吐きながら、長く息を吐いていることを知る。 2 短く息を吸いながら、短く息を吸っていることを知る。短く息を吐きながら、短く息を吐いていることを知る。 3息を吸いながら全身に気づく。息を吐きながら、全身に気づく。 4息を吸いながら全身を静める。息を吐きながら、全身を静める。 |
2番目の4つの呼吸 (心「感受」の部門) | 5息を吸いながら、喜びを感じる。息を吐きながら喜びを感じる。 6息を吸いながら、幸福を感じる。息を吐きながら幸福を感じる。 7息を吸いながら、思いの形成に気づく。息を吐きながら、思いの形成に気づく。 8息を吸いながら、思いの形成を静める。息を吐きながら思いの形成を静める。 |
3番目の4つの呼吸 (心の部門) | 9息を吸いながら、心に気づく。息を吐きながら、心に気づく。 10息を吸いながら、心を幸福で満たす。息を吐きながら、心を幸福で満たす。 11息を吸いながら、心を集中させる。息を吐きながら、心を集中させる。 12息を吸いながら、心を解放する。息を吐きながら、心を解放する。 |
4番目の4つの呼吸 (心「知恵」の部門) | 13息を吸いながら、あらゆる現象(ダルマ)の無常の本質を見つめる。息を吐きながら、あらゆる現象の無常の本質を見つめる。 14息を吸いながら、欲の消滅を見つめる。息を吐きながら、欲の消滅を見つめる。 15息を吸いながら、終息(涅槃)を見るめる。息を吐きながら、終息を見つめる。 16息を吸いながら、放棄を見つめる。息を吐きながら、放棄を見つめる。 |
実はシンプルな16の呼吸の捉え方
16の呼吸を見ると難しく思うけれど、実は結構シンプルです。
仏教の基本となる教えの一つにダルマの法則があります。
ダルマの法則には、無常・無我・苦という考えがあります。
無常とは、全ては変わっていく。だから無理矢理それを止めようとすると苦しい
無我とは、全ては自分のものではない。だから無理矢理思い通りにしようとすると苦しい。
だから、無常と無我を理解して、執着を手放せば苦しみは消えていく。というとってもシンプルな考えです。
その理解や執着の手放しを様々な瞑想を通して行おう!というのが禅瞑想で、その瞑想方法の1つがアーナパーナサティです。
16の呼吸は難易度の違い
1番目の呼吸から4番目の呼吸にかけて気づきの対象となるものが、少しづつ難しくなっていきます。
どういうことかというと、今呼吸に意識を向けると空気が出入りしている身体の感覚にすぐに気づける。
でも今、心がそれを受け取ってどういう気持ちでいるのかはすぐに気付けない。
こんな感じで、対象への気づきが難しくなっていきます。
つまり、16の呼吸は易しい対象から難しい対象になっているのです。
アーナパーナサティの効果
アーナパーナサティの効果は、どの人にも共通といわれるエビデンスは今のところありませんが、よくある声をまとめてみました。これらは行った人の主観的な効果としてご覧ください。
・心の静けさを感じる
・集中力が続く
・落ち着きがでる
・シンプルな気持ちになる
これらは一時的な効果かもしれません。続けることで日々の心持ちが変わり、人生そのものが変わることがあります。それも効果といえるのかもしれませんね。
私個人的には、アーナパーナサティに限りませんが集中タイプの瞑想を続けたことによって、怒りが発動した時に突発的にでてくるネガティブな言葉や行動を抑えることができるようになった気がします。
アーナパーナサティの実践
アーナパーナサティの方法は、流派によって異なります。
ヴィパッサナー合宿に行かれた方は、ゴエンカ式だと思います。
ここでは、アーナパーナサティ・スートラに書かれた内容を元に1番目の呼吸の瞑想をご紹介します。
また、アーナパーナサティとは異なりますが、簡単にできる呼吸の瞑想をご紹介します。
アーナパーナサティ(1番目の4つの呼吸)
STEP1
まずはリラックスして座ります。
横たわったほうがいい場合は横たわります。
STEP2
ここにある体を観察していきます。
・お尻のあたりに体の重さを感じるなあ、とか皮膚のどこかに温かさや冷たさを感じるな、など
STEP3
ここにある呼吸に注意を向けていきます。
そして次の4つを1つづつ行っていきます。
1長く息を吸いながら、長く息を吸っていることを知る。長く息を吐きながら、長く息を吐いていることを知る。
2 短く息を吸いながら、短く息を吸っていることを知る。短く息を吐きながら、短く息を吐いていることを知る。
3息を吸いながら全身に気づく。息を吐きながら、全身に気づく。
4息を吸いながら全身を静める。息を吐きながら、全身を静める。
STEP4
呼吸から注意を離して日常的な心に戻します。
音声によるガイド瞑想:呼吸の瞑想
呼吸の瞑想
STEP1
まずはリラックスして座ります。
横たわったほうがいい場合は横たわります。
STEP2
ここにある体の感覚や心の流れを観察していきます。
・お尻のあたりに体の重さを感じるなあ、とか皮膚のどこかに温かさや冷たさを感じるな、心に湧き上がってきているものに気づいてうけとめている
STEP3
今一番空気の出入りを感じるところに意識をむけていきます。
・お腹、胸、喉、鼻先、どこでも一番意識がむくところです。
・そこで感じている感覚をモニタリングします。
・呼吸から意識が離れたら、今何を考えているかに気づきます。
・何を考えているか気づいたら、また呼吸の感覚に戻ります。
・これをしばらく続けます。
STEP4
呼吸から注意を離して日常的な心に戻します。
音声によるガイド瞑想:呼吸の瞑想
所用時間
指示された練習時間はありません。
長く続けるのが何よりだから、毎日5分ほどから初めてOK。
何年も習慣化してくると自然と長い時間瞑想ができるし、その時間を確保する余裕もでてきます。
アーナパーナサティの注意点
集中タイプの瞑想は、場合によって鬱や不安を強めることがあるので、そういう傾向にある人はこのタイプの瞑想は行わない選択をするか、なんとなく調子が悪いと思ったら実践を中止して他の瞑想方法を選ぶことをおすすめします。
最後に
アーナパーナサティは、呼吸を使った瞑想法だけど、大切なのはそこにある仏の教えです。
お寺まで行かずとも、本からも吸収することができるので、ぜひ実践に伴う仏の教えにもふれてみることを個人的にはおすすめします。
アーナパーナサティ・スートラに関するおすすめ本
こちら私も持ってる本です。とってもおすすめ!
ティクナットハンさんは、言葉もやさしくするりと体の中にしみこむので大好きです。