ログインログイン

GRACEとは -コンパッションを育む-

4月9日、15日、16日とジョアン・ハリファックス老子のGRACE研修に参加してきました。

オンラインとあわせ200名近い方が参加されたそうです

心が満たされた3日間!今日は、GRACEについてご紹介します。

GRACEとは?

GRACEとは・・・

ジョアン・ハリファックス老師が、ケアする自分自身のあり方や死生観について体験的に探求する「Being With Dying – 死にゆく人と共にあること」というプログラムを、最新の脳科学や認知科学の成果に基づいて整理し、コンパッション(compassion:慈悲心・思いやり)に根ざしたケアのあり方を育むために構築されたトレーニングです。

日本GRACE研究会(https://gracejapan.org/about_grace/)

看取りや緩和ケアをされる医療職や心理職の方の中には、他者への支援や援助活動をする一方で、自分自身のケアが十分にできずバーンアウトされることがあります。

そしてバーンアウトともに、本来の「誰かの役に立ちたい」という気持ちを見失い、自分がよくわからなくなるのです。

GRACEは、そのような状態になることを防ぐためにできた心のトレーニングで、コンパッションを要にしています。

GRACEとコンパッション

コンパッションとは?

コンパッションとは、言葉としては、仏教用語の慈悲喜捨の悲にあたります。その意味は、他者の不安や苦しみを取り除くことを祈る、無限に広げてよい善意の心です。

GRACEにコンパッションが必要な理由

出だしに書いたとおり、他者への支援や援助活動を実践する方々は、自分のケアを忘れがちです。

しかし、私たち人間は、他者を慈しむためにまずは自分を慈しむ必要があることが、仏教的にも、心理学的にも、脳科学的にも認めらているのです。

この他者を慈しむ心がコンパッションです。

そして自分を慈しむ心がセルフコンパッションです。

他者に援助・支援をする方々にとって、他者へのコンパッションのために、自身へのコンパッションは欠かせないものです。

だから、GRACEの要にコンパッションがあります。

GRACEにおけるコンパッションの5つの資質

ハリファックス老子は、コンパッションを5つの資質に分類しています。その5つとは、「利他性」「共感」「誠実」「敬意」「関与」です。

利他性
本能的に無私の状態で、他者のために役立とうとすること

共感
他者の感情を感じる力

誠実
道徳的指針を持ち、それに一致した言動をとること

敬意
命あるものやものごとを尊重すること

関与
しっかりと取り組むが、必要に応じて手放すこと

5つの資質は、コンパッションとは真逆に働くことがあります。それをハリファックス老子は、「コンパッションの崖」といっています。

その5つとは、「病的な利他性」「共感疲労」「道徳的苦しみ」「軽蔑」「燃え尽き」です。

病的な利他性
承認欲求に囚われたり、相手を依存させてしまったりする状態

共感疲労
相手の感情と一体化し過ぎて自分も傷つく状態

道徳的苦しみ
正義感に反する行為に関わったり、目にした時に生じる苦しみ

軽蔑
自信の価値観と異なる相手を否定し、貶めること

燃え尽き
過剰な負荷や無力感にともなう、疲弊と意欲喪失

コンパッションなき、支援・援助活動

コンパッションがない、つまり「コンパッションの崖」の状態では、本来の「誰かの役に立ちたい」という気持ちを見失った状態で、援助・支援にあたることになっていきます。

結果として、他者をあるいは、自分を、もしかすると他者と自分のどちらもが苦しむことになるかもしれません。

そこには、両方向のつながりがないのです。

だから、GARACEは、コンパッションを育むことを大事にしています。

GRACEの考えるコンパッションを育む方法

ハリファックス老子は、コンパッションは直接育むことができないと言っています。

しかし、コンパッションに関わる4つの領域にアプローチすることでコンパッションを養うことができると言っています。(参考サイト>>)

その4つの領域とは、

1.注意領域

2.感情領域

3.身体領域

4.認知領域

です。

GRACEは、この4つの領域を育てます。

A heuristic model of enactive compassion
行為的(エナクティブ)コンパッションの行動学習モデル
Joan Halifax

4つの領域を育てるGRACE5つのカテゴリー

コンパッションを育てるために、4つの領域からアプローチする。

それがGRACEのトレーニング方法です。

そしてそのトレーニングは、5つの項目に分かれていて、その頭文字をとった言葉がGRACEです。

5つの項目は、下記です。

1.Gathering attention
 注意を集中させる
2.Recalling intention
 動機と意図を想い起こす
3.Attunement to self/other
 自己と他者の思考・感情・感覚に気づきを向ける
4.Considering what will serve
 何が役に立つかを熟慮する
5.Engaging and Ending
 行動を起こし、終結させる

上記は、2023年4月段階の日本GRACE研究会のHPから参照しました。少しづつ変化しているので、違う内容になっているかもしれません。

研修では、この1つづつの意味を、臨床の場で実践している看護職の方のお話を聞いたり、脳科学から紐解いたり、禅的身体運動を行ったりと・・・かなりてんこ盛りの面白い内容でした。

研修では、それぞれの意味を学びました。少しづつだけご紹介します。

1.Gathering attention/注意を集中させる

Gathering attentionの目的

身体感覚に注意を集中し、呼吸を調え、地に足をつける。それがGathering attentionの目的です。

忙しい時、何かが起きた時は注意が散漫になりがちです。

この状態から、注意を1点に集めることによって、まずは今の自分の状態に気づき、開かれた態度に戻ることを目指します。

そうすることによって、目の前にある物事に自分らしく前向きに向き合うことができます。

Gathering attentionの練習方法

方法は1つではありません。注意が集められたらいいのですが、ポイントは、身体感覚に気づくことです。

これは、身体感覚に気づくマインドフルネス瞑想と同じです。

ハリファックス老子は、これをボディーフルネスと言っていました。

私はこれがとっても心に残っています。「ボディーフルネス!」

いくつか紹介されたものをこちらでも紹介します

方法1:グラウンディング

GRACEで教えられている代表的な方法はグラウンディングです。

グラウンディングとは、物理的に体が支えられている感覚を思い出す方法です。

・体が安定するように立ったり座った状態になる

・足裏に意識をむけ、大地と接している体の感覚を感じる(グラウンディング)

・体の感覚に気づいたまま、日常に戻ってくる

方法2:正気吸入法

藤田一照さんが、紹介してくださった方法です。

・両足を開いて安定した状態で立つ

・上虚下実を作る

・息を吸い、「う〜む」という声とともに吐き出す

・体が整った感覚に気づいたまま日常に戻ってくる

これは、実際に受けてみると「おぉ!」という気持ちになるでしょう。

ぜひ藤田一照さんのワークショップなどに参加して実際に受けることをおすすめいたします。おそらくFBの方が情報更新されています

藤田一照さんのHP>>
藤田一照さんのFB>>

2.Recalling intention/動機と意図を想い起こす

Recalling intentionの目的

Recalling intentionの目的は、今、ここで担っている役割や目的・動機を意識することです。

例えば、今している仕事で困難な壁にぶちあったた時、そこに自分がいる理由を忘れていると、自分がなすべきことがわからなくなります。

つまりresorece(内なる資源/エネルギー)が枯渇していくのです。

そこで、大切なのが、自分がどのような意図や動機を持ってそこにいるかを思い出すのです。

私は、GRACEのGとRの実践だけでもかなり自分の中心軸が定まる感じがします

Recalling intentionの練習方法

方法1:自分自身への問いかけ

・グラウンディングをする。

・今自分が対面している壁に対して、自分がなぜそこに向き合っているのか、その意図や動機を思い出す。(あるいは信念といってもいいかもしれない)

・思い出した状態で今この瞬間の自分の変化を観察をする

方法2:ペアワークで問いかけ

・2人組になり、お互いにグラウンディングする

・質問者が回答者に対面している壁に対して、そこに向き合う動機が何かを質問する。

・回答者は答える。質問者はただ聞き、答え終わるまで待つ。

・答え終わったら質問を繰り返す。(例として5分間はかって、その間質問と回答を繰り返す)

・時間がきたらお礼を伝え合い終了する

方法2は何度も答えることで、内側にあった本当の思いが出てきやすくなります。

ペアワークは、できればその方法を知ってる人同士で行うことがおすすめです。

3.Attunement to self,other/自己と他者の思考・感情・感覚に気づきを向ける

Attuning to self, then otherの目的

Attuning to self, then otherの目的は、自分の身体・感情・思考に意識を合わせてから相手に意識を合わせることです。

このカテゴリーは、コミュニケーション中に継続して行うものなので、その最中は何度も自分と他者の思考・感情・感覚に気づき続ける必要があります。

これってすごく難しい。

例えば家族の誰かと意見が食い違っている時、最初のうちは、グラウンディングだけでなんとかなる。

しかし話はすぐに決着せずに意見が食い違ったまま話が進んでいくことがあるんですよね。

途中から「もう我慢ならない!」なんてこともある。

だからこそ、気づき続ける必要があるんですよね。

難しいけど、練習する意味あるよね!

ただし、この練習には、自分や相手の感情を見ることや、思考に気づくテクニックが必要です。

私は、MBSRやNVCをしているから、できたけど、はじめて向き合う方にはとっても難しいかもしれません。

そういう意味では、Aは多角的な学びが必要です。

Attuning to self, then otherの練習方法

カラダ(身体感覚)・ココロ(感情)・アタマ(思考)の順番を覚えて!この順番に意識を向けていきます。

意識を向ける時は、まずは自分からです。

なにかが起きた時に・・・

・自分のカラダ(身体感覚)に気づく

・自分のココロ(感情)に気づきよりそう

・自分のアタマ(思考)に気づく

・相手のカラダ(身体感覚)に気づく

・相手のココロ(感情)に気づきよりそう

・相手のアタマ(思考)に気づく

ところで、カラダのところで「?」と思った方もいるはず。なぜならGRACEのGの部分と同じだから。

それ正解です。

なぜここにも同じ要素がはいっているかというと、目的の章で書いたとおり、ずっと連続し続けてるからです。

私も、わかってるつもりだけど、わかってないかもしれません笑

4.Considering what will serve/何が役に立つかを熟慮する

Considering what will serveの目的

Considering what will serveの目的は、最も適切な行動が何かを見極めることです。

この見極めに必要な2つのことがあります。それはヴァルネラビリティとネガティブケイパビリティです。

この2つを簡単に説明します。

ヴァルネラビリティとは、弱いと思っている自分です。この弱いと思っている自分は、内外部の刺激に反応してモヤモヤした気持ちをいただきます。

ネガティブケイパビリティとは、このモヤモヤした気持ちを見守る力です。

モヤモヤを隠した自分が普段の私たち

この説明について、NTTコミュニケーション科学基礎研究所リサーチスペシャリスト藤野正寛さんが簡単に噛み砕いた説明をくださり、それをさらに短い文章にしたんだけど・・・間違えてたらどうしましょう笑

話はもどります。

私たちは、なにか起きた時適切ではない行動をしがちです。その理由は、上記で書いたモヤモヤした気持ちを隠したいからです。

なぜなら、自分が弱いと思っている自分をさらけだすのは、とても勇気のいることだからです。

だけど、モヤモヤを見守る(ネガティブケイパビリティ)ことで、弱い自分(ヴァルネバビリティ)への関わりが変わり方が変わります。

つまり自己の世界観(自己観)が変わるのです。

それは、他者への関わり方や、世界との関わりが変わります。

適切な行動の1つの指標として、「バイアスのない状態」という言葉が使われていました。

ネガティブケパビリティやヴァルネバビリティは、バイアスのない状態に必要なのです。

Considering what will serveの練習方法

今回の研修で紹介されたCの練習方法は、ある事柄に対し、「わかりません」と言い、そういった自分の内側で起きている反応に気づく練習でした。

この練習は、実際にGRACE研修にくることをおすすめ。

とても繊細な内容で口頭でも間違えて捉えやすいから、文字だとなおのこと。

興味あるなあという方は、ぜひ研修に参加してみてね。

5.Engaging and Ending/行動を起こし、終結させる

Engaging and Endingの目的

Engaging and Endingの目的は、関与し、一旦区切りをつけ終了させることです。

-Engaging

Engagingは、関与です。

関与は、GRACEのGRACの実践の結集です。

-Ending

Endingは、終了です。

思い出しですが、GRACEは、援助・支援をする医療者向けのプログラムです。

例えば、どなたかを看取ったあとというのは、複雑な気持ちがあります。

私には想像できません。ですが、自分の身内の死の場面を思い出した時、その看取りの直後に、自分の心を整理するのが簡単ではありませんでした。

でも臨床に携わる人々の前には、次々と「次」がくるのです。

自分の心がまだちゃんと行き場を決めてないような状態で「次」にいくのです。

それが続けば、まるで抜け殻のようになりかねません。

だから、そうならないように一度区切りをつけ、終了させることが必要なのです。

自分のために、次の他者のために、一度終了させるのです。

Engaging and Endingの練習方法

ここでは練習方法というより、自分なりの儀式的なものを考える時間がとられました。

皆さんだったらどうしますか?

医療関係の方からは、「手を洗う」という声が結構あったなあ。

私は、グラウンディングを選びました。

やはり、自分のカラダに戻ってきました。

最後に

実は数年前にGRACEを知った時、ちょっと気になっていました。

今振り返ってあの時、WSに参加しておいたら良かったな。と思うけど、今だからこそ良かった。とも思う。

私は医療職ではないけど、ヨーガを伝えていく人や、普通に働く人にもGRACEのプログラムはしっくりきます。

このブログを通してGRACEを知った方、どうぞWSに参加してみてね。次は2023年9月、東京開催です。

多分こちらのページに掲載されると思います。

日本GRACE研究会>>

そして、私はGRACEyogaサークルなるものを立ち上げました。

なんとこの講座に参加している方の中にスーパーご近所の方がいたのです。Aちゃん。

Aちゃんと共に立ち上げました^0^最初のメンバーは18名。どうしていこうかしら。と色々考えております^^

また何かご報告できたらいいなあ。

最後に今回参加したGRACE研修の数少ない写真を残します。